アンティークジュエリー物語n.7
百合の伝説
フルール・ド・リス I

「 フルール・ド・リス 」とフランス語で呼ぶ百合の紋章はフランス王家の紋章として知られていますが、様々な歴史や不思議な物語を秘めたシンボルの一つです。

百合は聖母マリアを表し、中世以降の芸術には、マリア像の周囲にはユリの花がよく見られ、古くは古代エジプトやビザンティン美術にもあり、「無垢」「純潔」の象徴でした。

フィリッポ・リッピ 受胎告知 1460年頃 ロンドン ナショナルギャラリー蔵

フランス王家の紋章は「ユリ」の紋章と言いますが、一説にはアイリス(イリス)の花とも言われ、フィレンツェの紋章にも使われています。
では、いかにしてアイリスがフランス王家の紋章になり、
「フルール・ド・リス」と呼ばれるようになったのでしょうか?

ユーゴ・ヴァン・ゴエ 15世紀末 ウフィツィ美術館 / フロリン金貨

それには、一つの伝説があります。

紀元5世紀、フランスの源泉となったフランク国の王「クロヴィス」の時代の聖者が発端でした。
ある日、聖者の瞑想中に天使が現れ、青く輝く土台にアイリスの花の楯を置いていきました。
聖者はその楯を持って王妃クロティルダの元へ行き、天使からの贈り物である事を告げました。
クロティルダはカトリックで、キリスト教を王に伝えフランスの国教とした王妃です。


王妃は王クロヴィスに楯を授け、戦いに勝った王は楯が全く傷つかず、3つのアイリスが黄金に輝いているのを見ました。
以来、クロヴィスは軍旗に3つの金のアイリスの花を使い、12世紀のルイ7世王は公式に十字軍の旗へ採用、フランスのブルボン王朝に見られるように、ロイヤルブルーを背景に黄金の3つのアイリスを紋章としました。

また、アイリスはフランス語で「イリス」、百合は「リス」と言い、初期のイリスが後世にリスと混同され「 フルール・ド・リス 」と呼ばれたと伝えられています。
どちらの花もヨーロッパでは「 神の花 」として、古代から現在まで神聖のシンボルです。

このように古来から伝説的なシンボルである上に、シメントリーで中央の高いデザインは、様式美の視点から見ても完成度の高い美しいもので、近世まで、王侯貴族ゆかりの宝飾メゾンでもジュエリーへ表されています。

次のコラム n.8では、百合の紋章のジュエリーをご紹介致します。

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