アンティークジュエリー物語n.16
デビュッタント
子供のジュエリー

ヨーロッパでは、小さな頃からジュエリーを身につける習慣があります。
今回は、そんな子供のジュエリーをご紹介します。

皇太子フィリペ・プロスベロ ベラスケス作 1659年 ウイーン美術史美術館

アンティークのジュエリーやオブジェには、大変小さなサイズのものが見られることがあります。
それらは、ほとんどが子供の為のジュエリーです。
エメラルドやルビーなど色の美しい石をセットした指輪や、細い金のチェーンを連ねたブレスレットやネックレス、

ベルリン美術館蔵

中には、このレースに包まれた16世紀のオランダの子供のように、ルビーのペンダントトップや黄金のガラガラを持っている子供もいました。
王侯貴族の子供達は、鈴やガラガラ、動物モチーフのオブジェなど、いわゆる、子供の大好きな玩具の形をした金銀細工のトップをチェーンと共に身につけることもありました。
なんとも豪奢な玩具ですね。


下のルーベンスの描いた天使のような子供をご覧下さい。
時代を問わず愛らしい姿に、真珠と珊瑚を組み合わせたネックレスを着けています。

鳥とたわむれる子供 ルーベンス作 1616年 ベルリン美術館

真珠と珊瑚、特に珊瑚は、宗教画の中で聖母マリアに抱かれた幼いキリストが、赤い珊瑚の枝をペンダントとしてさげたり、手に持つ像がありますが、これは古代ローマ時代や中世ヨーロッパの人々が、珊瑚には「 魔除け 」の力があると信じ、病を癒したり、悪魔の目から視線をそらすとされていました。

マルゲリータ王女 ベラスケス作 1654年 パリ・ルーブル美術館

真珠は、古くからその美しさと貴重さゆえに装身具としてあった上、神聖なものとしてキリストのシンボルに高められていましたので、大切な子供へのジュエリーとして適したものでした。
他には、悪魔払いの鈴や、病気から守るといわれた香草を入れるポマンダーなどもありました。


子供、特に女の子に贈られた真珠のネックレスは、年が1つ大きくなる毎に、1粒から数粒の真珠を増やし、成人する頃には、美しい連のネックレスや、その真珠を使ったジュエリーを作り上げ、ウエディングドレスへ身につけたという歴史もあります。
ただ、古来は天然真珠のみでしたので、粒揃いのネックレスを持てるのは、王侯貴族の中でもほんの僅かな子供達だけでした。

他には、常に身に付けるジュエリーとして、十字架や、聖母マリア像のペンダントトップがあり、これらのペンダントは、大人になっても他のジュエリーと組み合わせされ、大切にされてきました。


古い時代の子供のジュエリーには、美しい細工や宝石を使ったものもあり、小ささゆえの美しさが魅力です。

アンティークジュエリーやオブジェの世界では、特別に小さいもの、大きなもの、は稀少なものとして好まれます。
美しい宝石の嵌った小さな指輪をペンダントトップに、などというのも、素敵な身につけ方の一つです。

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