アンティークジュエリー物語n.34
シネマ@アンティーク
暗殺の森
観るだけでいろんな世界へ連れて行ってくれる映画、皆様はどんな映画がお好きでしょうか?
このシネマ@アンティークでは、映画の中のアンティークジュエリーをご覧になってみて下さい。
最近は、コンピュータグラフィックや特殊撮影を駆使し、どんなことでも映像化してしまいますが、ここではいにしえにフィルムで撮られた、俳優の息づかいの聞こえてくるような映画から、魅力あるアンティークジュエリーや着けこなしをご紹介していきます。
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さて、第1回目は「 暗殺の森 」から、
舞台は1930~40年代のパリ、
ベルナルド・ベルトルッチ監督のイタリア・フランス・ドイツ合作映画で、フランスの俳優、ドミニク・サンダ(アンナ役)とジャン=ルイ・トランティニャン(マルチェロ役)が主役です。
愛と哀しみの物語ですが、フランスらしい映像美が魅力の映画です。
幼い頃の心の傷により、暗殺者となったマルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、パリでアンナ( ドミニク・サンダ )に出会います。
バレエを教えるアンナ、彼女の胸元にはてんとう虫のブローチがとめられていました。
フランスでは、てんとう虫が家にいると幸運が訪れると言われる、吉祥のモティーフです。
これはおそらくカルティエの作品ですが、映画では、このブローチが何度か出て来ます。
例えばサロンで、
スカーフの結び目へ留め付けています。
スポーティな装いに、エマイユやダイヤモンドを使った、動物や虫、花などのモティーフのブローチをつけるのも素敵ですね。
こちらはこの映画の最も有名なシーン、アンナとマルチェロの妻、ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)のダンスシーンです。
30年後半から40年代らしい、フランスのレトロな雰囲気でいっぱいです。
アンナは揺れるエメラルドのピアスに、ダイヤモンドのブローチ、イタリアのブルジョワ階級のジュリアも、1900年頃と見られるアンティークの真珠のソートワールや、ダイヤモンドと真珠のイヤリングや指輪を、黒と白のドレスに着けています。
ダンスのあとはシノワズリー趣味いっぱいの中華料理の夜餐、ベトナムから広東まで、植民地があったフランスならではです。
30〜40年代にはまだ、コロニアル・スタイルが一種のシックとされ、夜会の装いでお箸での食事というのが、エキゾチシズムでもありました。
左がマルチェロとジュリア、右はアンナと夫のクアドリ教授、アンナの装いには、ダイヤモンドの髪飾りも、
エメラルドや、大きめのダイヤモンドのブローチが引き立っています。
色の宝石が入っても、全体をダイヤモンドで揃えますと、すっきりと綺麗ですね。
こんな様式のジュエリーは、1900年〜30年代の、パリのグランサンクと言われた宝飾商で見られます。
そしてこの映画では、アンティークジュエリーだけではなく、ソワレから普段着まで、さまざまな装いを見る事ができるのも魅力です。
次のコラム n.35 シネマ@アンティーク フランス女優 では、アンナを演じたドミニク・サンダの映画での装いをご紹介してまいります。