アンティークジュエリー物語n.36
組み合わせの楽しみ
最新モードと

パリでは年に2回のファッションウィークがあり、その時期には、季節を先取りしたショーや展示会が街中で行われ、世界中から集まるデザイナーやモード関係者達が、パリを闊歩しています。


男女問わず、新しいモードを取り入れるのは、気持ちも浮き立つものですが、新しさの中へ、アンティークジュエリーを身に着けますと、雰囲気がこなれて見えて、シックな感じがします。

今回は、そんなスタイルを着こなす女性のお話です。

いつも世界最新モードを作ると評判のイタリアのデザイナーで、アンティークジュエリーの有名なコレクター、パリへも度々いらっしゃる素敵な方です。
モード誌に掲載された彼女の姿には、自分のデザインした服に合わせた、アンティークのジュエリーや小物が伺えます。


ある時は、ベージュのシンプルなワンピースに、19世紀のシトリンとゴールドのフィリグリーの貴婦人がドレスに着けていたような、大ぶりの首飾りとイヤリング、リングをパリュールをさりげなく、手には1920年代の鼈甲やクロコダイルのバックでした。


そしてインタビューでは、綺麗なカットの白いシャツと、黒地に凝った黒糸刺繍がなされたスカートの、一見シンプルな秘書風スタイルに、ポルトガル王室コレクションにあるような、17世紀の花と鳥を象ったペンダント、そしてショーの最後に登場した時には、黒いタートルネックのニットとタイトスカートに、星を散りばめたような、アール・デコのダイヤモンドのブローチとピアスでした。

このように、さまざまなスタイルを楽しむ彼女ですが、常にかかさないのは大ぶりで装飾的なピアスで、19世紀始めの長さ10cmはある、金の花模様で囲んだアメジスト、ナポレオン3世帝政時代の大振りの花のエマイユ、そしてアールデコの、揺れる真珠とダイヤモンドを着けていました。


彼女のデコルテは常に18世紀風に大きく開けたスタイルか、ぴったりと首を包んだ服装で、両方にピアスに映えています。
これらは一例ですが、モード誌に掲載されている彼女のコーディネイトには、驚くような組み合わせもあり、新しさと古さが混ざり合いながら、その人らしい素敵さを作っています。

ある日、雑誌のインタビューで、
「 古いジュエリーをあなたのコレクションに合わせているのがいつも印象的ですが・・・ 」という問いかけに、こんな風に答えていました。

「 祖父の時代から続いたメゾンを、常に新しい感覚を入れながら、なおかつ続けていくのは並大抵の努力ではできません。それにモード界は切磋琢磨で、時には心底疲れることもあります。でも、アンティークジュエリーを身に着けていると心が静かになり、常に私が私自身でいられるのです。
そして素晴らしくて気に入ったジュエリーは、私の心へ語りかけ、エネルギーを与えてくれるから。」


モードの世界は一種特殊なところもあるようですが、アンティークが好きな人なら、誰もがこんな風に感じた事があるのではないでしょうか。


彼女の言葉は、アンティークジュエリーの魅力の一つを語っているでしょうし、自分の好みで楽しみながら、精緻な作りや、時代性のあるデザイン、作られた国独自の美しさを愛でられるのが、アンティークジュエリーの魅力だと思いませんか?

◁ n.37 ミラネーゼのお洒落  n.35 シネマ@アンティーク フランス女優 ▷

ページの先頭へ