アンティークジュエリー物語n.78
メンズジュエリー
ルネサンスの色
メンズジュエリーといえば?
控えめな色の装いに、密やかに光るカフスボタンやピンブローチを思い浮かべるのではないでしょうか。
いにしえのヨーロッパは正反対。
グレーや紺の今とは逆に、男性は女性より華やかなのが当たり前でした。
モノトーンが主流になったのは、19世紀の中頃から。
それまでは自由で華やかで、特に1400年代から1600年代のルネサンスと言われた時代の男達は、ジュエリーも、装いも、まず自分たちが一番良いものを選んでいました。
ルネサンスのような古い時代のアンティークジュエリーは、多くは残っていないため、目にする機会も少ないものですが、
当時流行の古代のカメオ やインタリオのコレクションや、
オリエントから、時間と金貨を引き換えに、船や馬で運んでくる宝石や、
今はもうオリエントの国で採れない、ダイヤモンドと同じ価値がある「コマドリの卵色」と呼ぶ、鮮やかな空色のトルコ石やをはじめ、インドのダイヤモンドや古代の発掘品…のジュエリーがありました。
当時の雰囲気を伝える肖像画では、そんな高価な石や彫刻のリングを、鑑賞者へ見せています。
まるでジュエリーが主役のようですね。
ただ、古い時代の肖像画は美しいのですが、実際の装いには参考になりそうになく…、ヒントがあるとすれば、色合いではないでしょうか。
例えば、上の男性のように、こげ茶や深赤に合わせたアゲートのカメオやインタリオ 、
ブロンドの長髪の男性のグレイッシュなニットやジャケットには、赤い宝石をアクセントにと、
色を基準に考えれば、今の装いにぴたりとはまりそうです。
例えば凝った金細工のリングは、どんな色にでも、どの季節にも合いますし、
アンティークジュエリーならではの透かし細工や、金の落ち着いた色や質感は、他にはないものです。
当時の金細工師が、全てハンドメイドで作り上げているのですから当然ですね。
ネックレスやペンダントも着けやすいジュエリーで、
18金製ですと、暑い時期でも水洗いもできますので、気軽に装えます。
こんなふうに、ジャケットやカーディガンのVネックから、ネックレスやペンダントがのぞくのも素敵ですし、
金の彫金リングは、他と組み合わせやすいアンティークジュエリーです。
もとは家紋や信仰、貴族位を示した、ヨーロッパならではのモティーフのペンダントは、オリジナリティあふれるジュエリーです。
そんなシンボリックなペンダントは、美意識や知的背景がうかがえて、
何者? と気になってしまいますね。
男性のお洒落は、見えないところにまで凝ることで知られていますが、
肖像画の男達は、ちょっとしたヒントをくれる、アンティークジュエリーの先達なのかもしれません。
もちろん女性も、彼らのアイデアを取り入れてみてはいかがでしょう。